悲劇の背景

公開日: 2022年7月4日

こんにちは、安堂達也です。

今年の夏は平年より厳しい暑さとなっております。昨年は送迎バス内にいた園児が熱中症で死亡するという大変いたましい事件がありました。再度似たような、事故、事件がおきないようにこのブログを読んだ先生にはリスクヘッジの参考にしていただきたいと思います。

送迎バス降車漏れ熱中症死亡事故の背景にあるもの

この事件の初報で私は、
①バス降車時の点呼をしないのはありえない
②運転手の他、添乗員も含め、2名で見逃すのはあり得ない
③クラス担任が朝の点呼で見逃すのはあり得ない

とみていました。

実態は、

①園長が一人で運転
②当時は泣く子もいて降車確認が不完全だった
③クラス担任はお休みだと思い込んで確認しなかった
ということでした。

先生は、本件は何が問題であると感じますか。
毎日新聞の報道によれば、

「代理人弁護士によると、園では勤務時間を減らして人件費を削減するため、朝の迎えのバスは園長が1人で乗り込み2コースを運転していたという。」

という事情が伝えられました。
私の視点で問題点を整理すると

①日常からの基準行動が非常にあいまいであった
※点呼ルールがない(と思われる)

②チェック体制が当事者1名に委ねられている
※人は誤るという前提で確認の仕組みは作るべき

③職場内コミュニケーションが良好でない
※担任は違和感を感じず運転手である園長に一言も声掛けしない


という問題が考えられます。しかし、これらは顕在化された問題であり、潜在的な問題はその他の幼稚園・保育園にも通底する要素があります。

それは、
園では勤務時間を減らして人件費を削減するため、朝の迎えのバスは園長が1人で乗り込み2コースを運転していた
という部分です。

ここでは、経済性を論点としていますが、私立幼稚園から認定こども園に移行する際などに、教職員の勤務時間が早出や遅番が必要になっていきますが、学園によってはこうした勤務時間の変動に難色を示す、というかあからさまに不快感を表し、非協力的な態度をとる職員がいます。すると、こうした職員に頭を下げてお願いするよりは、経営者である園長が一人で頑張ってうわべの解決を図ってしまうことがあります。

働き方改革を進めるうえで、少なからぬ経営者の理事長や園長先生が、自らの休日を返上しながら自己犠牲で「一人で頑張る」姿を私は見てきました。

説明下手な園長、お人よしの園長、孤独の園長、、、、、

残念ながら孤軍奮闘だけでは、園内の問題はいつになっても解決できません

事件の保育園の問題の背景は、添乗員のパートをなかなか雇用できない求人事情かもしれませんし、本気で雇用しようとしていなかったのかもしれません。

保育士達も、園長との日常的なコミュニケーションが悪かったのかも知れません。

これらは経営者としてのリスクマネジメント能力の低さの露呈と言えます。

私は、この報道の弁護士の言葉を読んだときに、けっして他人事の話に見えなくなってしまいました。つまり、送迎バスの添乗や点呼の不備問題として以前に、「経営者と労働者のコミュニケーションの問題」であり、「経営者のリスク意識の低さ」が露呈した、起こるべくして起きた事故であったと思います。

最後に私から、関連するリスクヘッジのチェック項目を述べておきます。

バス送迎についての振り返りチェック項目

◻︎ バス送迎・お帰り際の引渡し対象者は年初に記名書類を回収している
※離婚調停中の配偶者による連れ去りにより、園が訴えられた事案があります

◻︎ 夫婦別居など行政提出に至る前でも、家内の変化は報告するようお願いしている
※園児の情緒配慮のみでなく、上記の連れ去り事件などへの予防となります

◻︎ バス添乗者引渡し関係者は乗車園児にまつわる家庭事情を把握できるよう職員室周知している
※すべて上記のような最悪のリスクに備えるためです

◻︎ 長時間送迎の場合は、水分補給などを定期的に添乗員は促している

◻︎ バス送迎者リスト管理と点呼業務は漏れがないよう書面で徹底している

◻︎ 連絡のないお休みの子には電話確認など状況の把握を行っている

園内リスク管理についての振り返りチェック項目

◻︎ 園内設備遊具などの清掃と見回りは日課であり清掃者記録と不備個所の報告は書面でしている

◻︎ 園内園舎内外の危険個所発見時の報告書面は書式があり、日常的に提出され即座に対応している

◻︎ 園児の食物アレルギーの情報は、クラス担任、補助教員、調理スタッフは共有している

◻︎ アレルギー対応食の扱いは、運搬から園児の口元に届くまで、間違いがないような工夫を重層的に凝らしている

◻︎ 毎日の活動内でのヒヤリハット記録は教職員に義務付けられており、提出は習慣化している

ヒヤリハットシートの考え方・伝え方は以下の記事を参照してください。
https://blog.mcdata.plus/preparation/hiyari-hatto-guide/
※記事内のヒヤリハットシートはこちらです
http://www.ishiimark.com/dwnld/nmt-1-v0.pdf



本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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メルマガ文責(C)安堂達也 

株式会社安堂プランニング 代表取締役・幼稚園経営コンサルタント
幼稚園☆元気塾 主宰・幼稚園研修.com 運営代表・保育研修プロデューサー
キャリアコンサルタント・認定心理士・TA心理カウンセラー・メンタルアップマネージャー
主な著書に「園児を集める49のヒント」「連絡帳の書き方ハンドブック」民衆社刊

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