離職の心理

公開日: 2022年11月21日

こんにちは、安堂達也です。

2学期になりますと、経営者は来年の職員の継続意思が気になるという話をよく伺います。
最近は、園長先生の個別面談の前後で私が面談を行いフォローすることも増えてきました。
こうした経験から、離職を考えている教職員は、どのような心理状態になっているかを考察してみました。
退職を希望している先生への対応に困っているという先生の、お役に立てばうれしいです。

離職を考えている教職員の心理状態の考察

私がここ数年で面談をしてきた教職員(すべて私学助成の幼稚園)の、離職を伝えてきたり、ほのめかしていた教職員の心情を察してキーワードにまとめると、以下のような心情が浮かび上がります。
キーワードは実際に会話の中で使われた言葉を抽出しています。

1.孤立・絶望

  • ●職場内に頼れる人がいない。
  • ●誰も信じられない。
  • ●誰も守ってくれない。
  • ●職場に居場所がない。
  • ●もう無理。
  • ●先輩に裏切られた。

※実際に先輩が「裏切った」かどうかよりも、本人がそう感じて述べたことを記録しています。

【考察】

母性的なリーダーシップがない職場では、こうした心情になりやすいです。仕事上の技術的な指導者とは別の関係性の中で、日常的に声掛けをしてくれる先輩や同僚がいると、こうした状態にはなりにくいです。逆に言うと、自分から積極的に他者に働きかけることが得意でない人などは、こうした心理になりやすいともいえるので、おとなしい人ほど、普段から声掛けを行い、気持ちを吐き出しやすくしておくことが必要です。これは、学年主任の他に、声掛け役を組織的に決めておく必要があるということを意味しています。


2.自己嫌悪

  • ●職業(または職場)が、私には向いていない(他者否定よりは自己否定が強いニュアンス)。
  • ●私にはうまくできない。
  • ●私が悪い。
  • ●どうせ。
  • ●どうもうまくいかない。どうにも。
  • ●もう自分が嫌。

【考察】

大きく2つの要因が考えられます。一つは業務処理能力。私の研修では、「学習能力」と呼んでいます。もう一つは対人関係能力。コミュニケーションスキルのことですが、この場合は背景にパーソナリティーの問題がある場合が多いです。つまり、学習能力に問題がある教職員は、日々仕事がうまくいかないことを理由に自己嫌悪します。対人関係がうなくいかない人でパーソナリティーに問題をかかえる教職員は、他者を悪人と決めつける場合がありますが、思いつめるうちに自己否定感が他者否定感と交互にやってきます。「こんな職場をどうして選んでしまったのだろう。私はどうしていつもこうなるのだろう。」という感じです。ここで必要なことは、職場に教育や研修の制度があり新人の技術面を支援できているかという反省です。また、パーソナリティーの問題に関しては、過剰な問題については入職時の面接で採用してしまったこと自体に問題があると考えますが、採用してしまったからには、日常的な指導を丁寧に行っていくことが大切です。


3.駆け引き

  • ●できれば居たいと思うけど、このままだと無理。
  • ●もう少し・・して欲しい。
  • ●・・してくれたら考える。
    (給料を減らす、人数を増やす、仕事を減らす、早く帰れるように、上司が辞める、等)

【考察】

合理的に話し合うことをせず、心情的な駆け引きで操作的に経営者と関係を取ろうとする教職員がいたとしたら、それは背景にパーソナリティーのリスクを持った職員と疑う必要があるかもしれません。経営者や上司を悩ませてしまうのは、こうした職員は意外と仕事は出来たり、保護者の信頼を持っていたりするのです。どのように対応するかは、学園の経営方針を理解して働くことが今後できるのかどうか、ということになるでしょう。頭の良い方が多いので、しっかり気持ちを切り替えてくれれば、経営者の右腕にまで育ってくれることもあります。ただし、その見極めは、「自分の利益になるからやる」なのか「他人が喜ぶからやる」なのか、ということです。仕事の対価はもちろん享受されるべきですが、最初から最後まで条件や賃金を要求している人は、いかがかと思いますが。


4.出直し

  • ●別の仕事を経験してみたい。
  • ●違う方針のところで働きたい。
  • ●少し休んで、よく考えたい。
  • ●もういいかなって。

【考察】

気持ちの面では、いったん終わっている状態です。つまり、気持ちの整理を終えているということです。 しかし、その思考の深度は人により、浅い人もいます。なので、さばけているように見えますが、内外の条件が変われば翻意する場合もあります。 それは、自園の労働契約条件であったり、あてにしていた外部の雇用条件が何らかの理由で変わるということです。学園にとって必要な人材であるなら、泣き落としで引き留めることが功を奏することもあるかもしれません。


5.やむなし(結婚による転居等)

  • ●結婚するので。
  • ●引っ越さないといけないので。

【考察】

やもえないですよね。結婚や妊娠を契機に、態度を冷たくしてしまうマタハラなどが最近は言われていますが、やむなしで退職される人には、とことん優しくしておくことです。あの幼稚園は良い幼稚園だった、良い園長先生だった、という印象を残して送り出すことは、将来にわたってよい人間関係を地域に構築してくことに必ずつながるからです。

以上、本日は私の経験からの考察ということで、職員の慰留に努める必要がある経営者や上司にとって、参考になればと思いまとめてみました。

先生の学園経営、施設経営にお役に立てれば幸いです。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。



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メルマガ文責(C)安堂達也 

株式会社安堂プランニング 代表取締役・幼稚園経営コンサルタント
幼稚園☆元気塾 主宰・幼稚園研修.com 運営代表・保育研修プロデューサー
キャリアコンサルタント・認定心理士・TA心理カウンセラー・メンタルアップマネージャー
主な著書に「園児を集める49のヒント」「連絡帳の書き方ハンドブック」民衆社刊

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